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感情と思考は似て異なるもの - こぼれ話

不安になった自分にがっかり

こんなお悩みをよく聞くのです。

「予期不安を感じながら、それでも何かをこなすことはできました。本当なら喜ばなきゃいけないのかもしれないのだけど、ちっとも嬉しくないんです。

それどころか、不安を感じた自分にがっかりして落ち込んでしまうんです。」

と、そんなお悩み。

本当に本当によく聞きます。

パニック障害・不安障害を抱えておられる多くのかたが、同じことを感じて、同じように落ち込んでおられるのだろうと思います。

 

でも実は、私がパニック障害だった当時、この手の感覚になったことは一度もありませんでした。

なんせ、予期不安を感じながら何かをこなした時には、いつも手放しで大喜びでしたから。

だから正直なところ、ただ疑問なのです。だってせっかくやり遂げたのに、どうして落ち込む必要があるのでしょう。

十分すごいのに。えらいのに。

 

ふと、スキーマに思いが及びました。

スキーマを紐解けば、何か答えが見つかるかもしれない。

うまくいったのにがっかりしてしまう。その気持ちの裏側にも当然、自動思考とスキーマがあるわけですから。

自動思考
自動思考とスキーマ(信念)

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思考をすくい上げる

思考をすくい上げる

そもそも「がっかりする」とか「落ち込む」というのは、感情です。

それ自体は自動思考ではありません。「感情」と「思考」は、似ているけれどまったく違うものです。

アメリカの精神科医ウィリアム・グラッサー氏は、人間を構成する要素として「行為」「思考」「感情」「生理反応」の4つを明確にわけています。

感情は内側からわき出してくる泉のようなもの。ワクワクやドキドキ、悲しみや怒り。自分でコントロールしようにもできないのが、感情です。

一方で、思考は自分でいかようにも変えることができるもの。

公園にピクニックにでも行こうかな、いや、雨が降りそうだから美術館にしようか。そんなふうに自分の意思で形を変えられるのが、思考です。

あ、この話はまた別に機会にしましょうか。長くなっちゃいそうだから。

ともあれここで押さえておきたいのは、感情と思考は似て異なるもの、ということ。

 

だけどパニック障害・不安障害の不安感や恐怖感について考えるとき、思考が置いてけぼりになってしまうことはよくあると思います。

感情に支配されてしまうと言った方がいいでしょうか。

ドキドキ感や恐怖心などの感情が先に立って、その瞬間に「何を思ったのか」というのが案外パッと出てこない。

でも、たしかに何かしらの自動思考がよぎったはずなんです。それもネガティブな。

だって、とっさに「この電車に乗ったら、素敵な出会いがあるかも!」とか「うわ、このケーキ絶対美味しいに決まってる!」なんてことを考えたのだとしたら、不安感や恐怖感を覚えるはずはないんですから。

 

わたしは感情に振り回されてはいない

感情に振り回されてはいない

ここまで書いて、ふと気づきました。

そうか、感情に振り回されていると思うから、がっかりするのじゃないかしらと。

本当はもう少し違う着地点を用意しながら書いていたのだけど、どうもこの思いつきの方がしっくりきます。

「自分ではどうにもコントロールできない不安や恐怖という感情に、いつまでわたしは振り回されるのだろう。」

そう思うからこそ、自分のことがことさら無力に思えてがっかりするんじゃないでしょうか。

ますます先が見えなくなって、ほのかに絶望してしまうんじゃないでしょうか。

 

感情と思考は異なるものだけど、実は連動しています。

まず自動思考が先にあって、そこに感情が乗っかる。基本的にはそう考えていいと思います。

予期不安のプロセスは、まず先に「倒れてしまうかも」「また発作が起きるかも」「倒れたら迷惑かけちゃう」「変な目で見られちゃう」そんな自動思考が瞬間的にわき起こって、その結果として不安や恐怖が生まれる、というのが大まかな流れ。

だからこれは明確に言えるのだけど、そのとき私たちは不安や恐怖の感情に振り回されてはいません。

感情に埋め尽くされてしまって、なかなか気づけないかもしれないけれど、実際にはただ自動思考が不安と恐怖を誘発しているに過ぎないんです。

コントロールできない感情に振り回されるのだったら、たしかに私たちはパニック障害に対して無力かもしれない。

だけど本当はそうじゃない。決して無力なんかじゃない。だって感情の元になる思考は自分で変えられるんですから。

 

グラッサー博士いわく、感情は変えられないけど、思考は変えられる。思考を変えれば、感情も変わる。

思考を変える力は誰にでもあります。

不安や恐怖を振り払いたいときには、自分がホッと安心できるような思考をすればいいんです。

どうやって思考を変えるのか、それこそが認知行動療法の本分でもありまして。

ネガティブ思考に待った
ネガティブ思考に「待った!」をかける

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ただとにかく。

私たちは無力ではない。まずその事実だけでも先に腑に落としてもらえたらうれしい。

がっかりを抜け出す道は、きっとそこから伸びていくんだろうと思います。

それにしてもスキーマはつくづく多面的ですね。読み解くのはちょっと探検めいています。

もっと突っ込んだお話も、またいずれ。(おわり)

管理人まーる

パニック障害を克服した元商業ライター現医療機器系OL | 上級心理カウンセラー(民間)| 80年代生まれ | 旅行大好き | 乗り物・フルタイムのお仕事OKすこぶる元気 | 服薬・通院はしなかったためお薬には疎い

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