エクスポージャー(曝露療法)とは
人間にはストレスに対する防衛反応として「闘争・逃走反応」というものが備わっています。
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参考リラクゼーション訓練
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これは、命の危険を感じたり、それと同等の強いストレスを受けると、脳が「逃げるか、戦うか」の指令を全身に送るというもの。
そして「すぐに逃げられるように」または「力強く戦えるように」とりわけ筋肉にエネルギーを集中させます。
そのために身体の各器官が連携し合って、呼吸数を増加させたり、筋肉を緊張させたり、交感神経を優位にしたりするのです。
実はこんなのも「逃げるか戦うか」反応
- 顔が真っ青になる ケガをした場合に出血が少なくてすむよう、皮膚に流れる血を制限している
- 手に汗をかく 木を登って避難したり、武器をしっかり握って戦えるよう、手が滑らないようにしている
パニック障害・不安障害のときは、この「闘争・逃走反応」がむやみに発動されてしまいます。
危険でも何でもない状況で、脳が「命の危機だ!」と勘違いして指令を送ってしまうのです。
認知行動療法では、この勘違いによって起こったさまざまな反応を物理的に鎮めるため、まず「リラクゼーション法」を実践します。
そして、そもそもの勘違いを起こさないようするために、「エクスポージャー(暴露療法)」をやっていくというわけです。
具体的には何をやるの?
パニック発作を経験すると、その後、発作を起こしそうな場所や状況で「また発作が起きてしまうかもしれない…」という不安感がまとわりつくようになります。これが「予期不安」と呼ばれるものです。
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参考パニック障害・不安障害とは
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そして予期不安を抱えていると、発作を起こしそうな場所や状況を意識的に避けるようになります(回避行動)。
この回避行動をすればするほど苦手なシチュエーションは増え、ますます行動範囲が狭くなってしまいます。また、回避を続けているうちは、脳の勘違いを修正するきっかけも得られないままです。
ですから、脳の勘違いを修正し、予期不安を無くすためには、回避行動をやめて不安や恐怖を感じる状況にチャレンジしていかなくてはいけません。不安と恐怖にあえてさらされる(曝露される)のです。これがつまり「エクスポージャー(曝露療法)」。
エクスポージャーを実践することで、そのとき感じている不安感や恐怖感が、実際には行動範囲を制限しなければいけないほどの脅威ではないことが分かってきます。
「この状況は、逃げることも闘うことも必要ないのだ」ということを、再び脳に学習させていくのです。
エクスポージャーの目的は
苦手な状況を回避せず、不安や恐怖をあえて体験すること
エクスポージャーの進め方
日常的にリラクゼーションの訓練をしましょう
エクスポージャーを実践するときには、「呼吸法」と「漸進的筋弛緩法」が役に立ちます。
いざという時にスムーズに実践できるよう、日頃から訓練をしておきましょう。
目標を立てましょう
「回避行動をやめて予期不安と向き合う」とは言っても、いきなり最初から「海外旅行に出かける」といったような無茶をしてはいけません。
まずは小さなことから、段階的に目標を設定しましょう。
小さな目標からコツコツと達成していくことで、少しずつ自信がついてきます。この自信もまた回復の大きな支えになってくれるのです。
目標を立てるときには、「不安階層表」を利用すると分かりやすいでしょう。以下の記事を参考にしてみてください。
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参考エクスポージャーの目標設定
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小さな目標からエクスポージャーを実践しましょう
立てた目標の中で一番簡単だと思えることから、順番に実践していきましょう。
予期不安が出てきたら「呼吸法」か「漸進的筋弛緩法」をすぐに開始してください。呼吸法の方が手順が少ないぶん、やりやすいかもしれません。
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参考呼吸法を覚えよう
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呼吸法がうまくできればパニック発作を起こすことはありません。
そのとき感じている不安や恐怖、また「闘争・逃走反応」に伴うさまざまな症状は、そのうちゆっくり静まっていきます。その感覚をじっくりと味わうようにしてください。
一つの目標を達成し、その課題に不安を感じないようになってきたら、次の目標に進みましょう。
あくまでも段階的に目標を引き上げて、少しずつステップアップしてきます。
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参考エクスポージャー Q&A
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できれば毎日続けましょう
認知行動療法のマニュアル本には、こうあります。
怖ければ怖いほど頻回に直面しなさい。
ギャビン・アンドリュース「不安障害の認知行動療法(1)」より
実践する間隔を空けると、不安感や恐怖感がぶり返してしまうこともあります。
忙しいとき、調子が悪いときには、すでに克服した目標をおさらいするだけでも大丈夫ですので、できるだけ毎日実践するようにしましょう。