認知行動療法② 不安で回避している状況に、あえて直面する

パニック障害・不安障害の認知行動療法3つの要素のうちの2つめ、「不安で避けている状況にあえて直面する」について解説していきます。

前回までの記事は以下のとおりです。

不安で回避している状況に、あえて直面する

パニック障害の予期不安については、前回までの記事に詳しくまとめました。

一度強いパニック発作を経験すると、その時と同じ場所、あるいは似通った状況に直面した際に、「またあの時みたいに発作を起こしてしまうかもしれない」という不安感に襲われます。

前回説明したように、不安感が高まると無意識のうちに過呼吸に陥ります。その過呼吸がきっかけとなってパニック発作の症状が引き起こされます。

そのような経験が何度か繰り返されると、「あの場所に行くとパニック発作が起きる」という認知がすっかり固まってしまい、次第にそのような場所や状況を避けるようになってしまいます。

これを「回避行動」と言います。

回避行動がなぜ良くないのか

発作の危険があると分かっているので、あらかじめその場所や状況を避ける。この回避行動は一見正しい事のように思いますが、回避行動を続けると良くない理由があります。それは「回避行動を続けると、不安を感じる場所や状況がどんどん増えてしまう」という事。

既に実感されている方もおられるかと思います。

最初に発作を起こしたのは電車の中なのに、しばらく電車を避けているうちに、他の乗り物や他の状況でも同じように予期不安を覚えるようになってしまった、というような事を。

つまり回避行動を続けると、症状が少しずつ悪化してしまうのです。

ですからパニック障害から回復するためには、まず回避行動をやめ、予期不安を覚える場所や状況にあえて直面する必要があります。

予期不安に直面する際に欠かせない、呼吸コントロール

しかし、なぜ回避行動をするようになったかという理由に立ち返った時、ひとつの問題が浮上します。

それは、「パニック発作」です。

パニック発作を起こすからこそ回避行動が始まったわけですから、パニック発作そのものを克服しない限り「発作を起こすかもしれない」という不安は無くならないでしょう。

そこで思い出して欲しいのが、前回学んだ呼吸コントロールです。

呼吸量を意識的にコントロールして過呼吸にならないよう努めれば、パニック発作の諸症状は数分のうちに静まる事を私たちは既に知っています。

呼吸コントロールに慣れてくれば、発作が起きる前に予防する事もできるようになります。

ですから、この呼吸コントロールを使ってパニック発作を予防あるいは収束させ、「ここへ来るとパニック発作が起きる」という認知を「ここへ来てもパニック発作は起きないんだ」という認知に書き換えていくのです。そうして徐々に不安を払拭していくというわけです。

とは言え、例えば電車でパニック発作を起こした経験のある人に、いきなりラッシュアワーの地下鉄に乗れと言っても無理な話です。

初めのうちは呼吸コントロール自体にも慣れていないでしょうから、もしその通りに実践したら電車に対する恐怖心がますます倍増して、かえって逆効果になってしまうでしょう。

大切なのは、あくまでも「段階的に」直面していく事。簡単で小さな段階から、一歩ずつチャレンジしていく事です。

段階に分けて目標を立てる

はじめの第一歩として、まず目標を立てましょう。簡単なものから次第にハードルを上げていくイメージで、5〜10段階ほど設定してみてください。

例えば、不自由なく電車に乗れるようになりたいと思った時、以下のような目標を設定してみるとします。


  1. 人の少ない時間帯に、各停電車に1駅乗ってみる
  2. 人の少ない時間帯に、各停電車に2駅乗ってみる
  3. 人の少ない時間帯に、各駅電車に5駅乗ってみる
  4. 人の多い時間帯に、各停電車に1駅乗ってみる
  5. 人の多い時間帯に、各停電車に2駅乗ってみる
  6. 人の多い時間帯に、各駅電車に5駅乗ってみる
  7. 人の少ない時間帯に、急行電車に1駅乗ってみる
  8. 人の少ない時間帯に、急行電車に5駅乗ってみる
  9. 人の多い時間帯に、急行電車に1駅乗ってみる
  10. 人の多い時間帯に、急行電車に5駅乗ってみる

一つめの目標からチャレンジし始め、その課題で不安をある程度感じなくなったら二つめの目標にチャレンジします。このように一つ一つ段階ごとに目標をクリアしていく事で、無理なく最終目標に到達する事ができます。

先ほども言ったように、目標にチャレンジする際には呼吸コントロールを使います。

呼吸コントロール自体は難しいものではないのですが、いざ不安感が高まってくると頭が真っ白になってしまったり、恐怖感に支配されてしまったりして、初めはなかなかうまく実践できません。

ですから呼吸コントロールの練習をするという意味でも、一つめの目標は「簡単すぎるかもしれない」と自分で感じるぐらいに設定する方が良いでしょう。

自分では気づいていないかもしれない「隠れ回避」

ここまでは、パニック障害の症状からイメージしやすい回避行動を取り上げてきましたが、普段何気なくとっている行動が、実は回避の一種である場合があります。

例えば、気をそらす行為もその一種です。

不安感が高まってきた時に、何か別の事をやって気をそらせようとした経験はないでしょうか。

  • 本を読む
  • スマホでゲームをする
  • 音楽を聴く
  • 一緒にいる人ととにかく会話する
  • 何か別の事を必死で空想する

他にも十人十色の気のそらし方があるでしょう。

気をそらすのもテクニックの一つではありますが、気をそらす事に頼りきってしまうと、逆にこれが予期不安の原因になるので注意しなくてはいけません。

例えばいつも本を読む事で不安感から気をそらしていた人が、本を忘れて来た事に気づいたら。

音楽を聴く事で不安感から気をそらしていたのに、ふいに音楽プレーヤーの充電が切れてしまったら。

出かける時にいつも一緒に行動していた人が、急に都合がつかなくなってしまったら。

気をそらす手段が急に絶たれた時、おそらく不安感は一気に高まり、最悪の場合はパニック発作に至ってしまうでしょう。

大切なのは、不安から気をそらす事ではありません。不安と直面して、対処する事です。

気をそらすテクニックだけに頼らず、呼吸コントロールを使って不安を乗り切る訓練をコツコツ続けていきましょう。


ここでは、パニック障害の回復に必要な項目の一つ「② 不安で避けている状況にあえて直面する」方法を学びました。

次回は、パニック障害の回復に必要なその他の項目について詳しく説明していきます。

管理人まー

管理人まー

↑Twitterやってます(@ok_daijobu) パニック障害がすっかり治ったアラフォー女です。 35歳の時、通勤電車内でパニック発作を発症。以来、不安、恐怖、息切れ、めまいなどの症状が日常的に現れるように。電車やバスに乗れない、スーパーのレジに並べないなどの『広場恐怖症』や、「またあの症状が出たらどうしよう」という『予期不安』に苛まれ、一時は仕事はおろか外出さえもままならない状態でした。その後少しずつ症状が改善していき、2年後にほぼ寛解。さらに1年後にはすっかり完治。 克服するためにいろいろ試した事や感じた事などを、このブログに綴っていこうと思います。 元商業ライター。現地方OL。

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