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予期不安の先に待っているもの

パニック障害の症状は、大きく「パニック発作」と「予期不安」という2つの要素に分けて考えると理解しやすいかと思います。(参照記事

まずは、パニック発作と予期不安の関係性をもういちどおさらいして、その後症状がどのように推移するのか見てみましょう。


  • パニック発作を起こす

    最初のパニック発作は、多くの場合ストレス過多が原因だと言われています。


  • 予期不安を感じるようになる

    一度強いパニック発作を経験すると、その時と同じ場所、もしくは似通った状況に直面した際に、「またあの時みたいに発作を起こしてしまうかもしれない」という不安感に襲われるようになります。


  • 発作を起こしそうな状況を避けるようになる

    予期不安を感じるようになると、そのような状況を次第に避けるようになります。


予期不安を感じて、苦手なシチュエーションを避ける事を「回避行動」と呼んでいます。「不安だな、苦手だな、発作を起こしそうだな」と思ったら、そのような場所や状況を避けてしまう。こればかりは仕方のない事のように思いますよね。

でも、この回避行動こそがパニック障害や不安障害の主訴(主要な症状)と言えるかもしれません。なぜなら回避行動は回復を妨げる原因でもあるからです。

え、どういうこと? 予期不安を感じる場所は避けているけど、それが回復を邪魔しているって?

 

回避行動はなぜ良くないの?

発作の危険があると分かっているので、あらかじめその場所や状況を避ける。この回避行動は一見理にかなっているように思います。しかし回避行動を続けると、ある変化が起こる事が分かっているんです。それは「回避行動を続けると、不安を感じる場所や状況がどんどん増えてしまう」という事。

既に実感されている方もおられるかもしれませんね。

最初に発作を起こしたのは電車の中なのに、しばらく電車を避けているうちに他の乗り物や他の状況でも同じように予期不安を覚えるようになってしまった、というような事を。

つまり回避行動を続けると、症状が少しずつ悪化してしまうのです。できない事が少しずつ増えて、日常生活がどんどん制限されていく。パニック障害、不安障害で一番困るのは、このように日常生活が少しずつ発作や不安に侵食されていく事なのじゃないでしょうか。

ですからパニック障害から回復するためには、まず回避行動をやめなければいけません。予期不安を覚える場所や状況にあえて直面する必要があるんです。

予期不安と症状悪化

予期不安を感じる場所や状況を避ける「回避行動」を続けると、症状が徐々に悪化してしまう。パニック症状から回復するためには、回避行動をやめなければいけない。

なるほどー。でも怖いなあ、苦手な場所に行ったりすると発作を起こしてしまうかもしれないからなあ

 

苦手なシチュエーションに立ち向かうために

ただ単に回避行動をやめて苦手なシチュエーションに立ち向かえと言っても、そんなの無理に決まっています。パニック発作を起こすかもしれないのだから、それは当然怖いですよね。立ち向かう根拠、手段が必要です。

ここで思い出してほしいのが、前回学んだ「呼吸法」です。

なぜパニック発作を起こすのか、その仕組みも前回解説したとおり。パニック発作の症状は、そのほとんどが「過呼吸」による症状でした。突然理由もなく発作を起こしたように感じてしまうのは、無意識のうちに過呼吸になっていたからです。

その過呼吸を静めてくれるのが、3秒吐いて3秒吸う呼吸法(詳細は前回記事にて)。呼吸法さえ身につければ、予期不安を感じたとしてもパニック発作を起こす事はありません。

そうか、回避行動をやめる時にも呼吸法が役立つんだね
呼吸法が効かない人はいないんだそうですよ。人間の仕組みはみんな一緒なんですね

回避行動をやめて苦手なシチュエーションにチャレンジする時、予期不安に押しつぶされそうになったり、発作を起こしそうになったり、あるいは発作が実際に起きたりする事もあるでしょう。

慣れない間は呼吸法がなかなかうまく実践できなくて、効果が感じられないかもしれません。でも何度も実践するうちにコツを掴んで上手くなっていくはずですから、焦らず取り組んでみてください。

発作を起こしそうな時や発作の症状が出ている時に実際に呼吸法をやってみると、たった3秒息を吐いたり吸ったりするのが案外長く感じたりするものです。最初は解説記事や動画(コチラ)を見ながら実践すると、感覚が掴みやすいかと思います。

私も最初の頃は「こんなに3秒って長かったっけ?」と感じましたよ

苦手なシチュエーションを呼吸法で乗り切るうちに、「また発作を起こすかもしれない」という不安感は「過呼吸にならなければ発作は起きないんだ」というイメージに置き換わっていくでしょう。

そうして徐々に予期不安を払拭していき、最終的には発作や不安に脅かされない日常生活を送れるようにするのが認知行動療法の最大の目的なんです。

呼吸法と症状回復

呼吸法を身につけて苦手なシチュエーションを乗り切る = 日常生活が発作や不安のために制限されなくなる

とは言え、例えば電車でパニック発作を起こした経験のある人に、いきなりラッシュアワーの地下鉄に乗れなんて言っても無茶な話。

初めのうちは呼吸法自体にも慣れていないでしょうから、もしその通りに実践したら電車に対する恐怖心がますます増大して、かえって逆効果になりかねません。

大切なのは、あくまでも「段階的に」直面していく事。簡単で小さな段階から、一歩ずつチャレンジしていく事です。

 

段階に分けて目標を立てる

はじめの第一歩として、まず目標を立てましょう。簡単なものから次第にハードルを上げていくイメージで、5〜10段階ほど設定してみてください。

例えば、不自由なく電車に乗れるようになりたいと思った時、以下のような目標を設定してみるとします。

段階的チャレンジ

  • 人の少ない時間帯に、各停電車に1駅乗ってみる
  • 人の少ない時間帯に、各停電車に2駅乗ってみる
  • 人の少ない時間帯に、各駅電車に5駅乗ってみる
  • 人の多い時間帯に、各停電車に1駅乗ってみる
  • 人の多い時間帯に、各停電車に2駅乗ってみる
  • 人の多い時間帯に、各駅電車に5駅乗ってみる
  • 人の少ない時間帯に、急行電車に1駅乗ってみる
  • 人の少ない時間帯に、急行電車に5駅乗ってみる
  • 人の多い時間帯に、急行電車に1駅乗ってみる
  • 人の多い時間帯に、急行電車に5駅乗ってみる

一つめの目標からチャレンジし始め、その課題で不安をある程度感じなくなったら二つめの目標にチャレンジします。このように一つ一つ段階ごとに目標をクリアしていく事で、無理なく最終目標に到達する事ができます。

先ほども言ったように、目標にチャレンジする際には呼吸法を使います。

でもいざ不安感が高まってくると頭が真っ白になってしまったり、恐怖感に支配されてしまったりして、初めはなかなかうまく実践できません。

ですから呼吸法の練習をするという意味でも、一つめの目標は「簡単すぎるかもしれない」と自分で感じる程度に設定するのが良いと思います。

そうだなあ、それなら僕はまず「家の近所を15分散歩する」っていう目標から始めてみよう!

 

自分では気づいていないかもしれない「隠れ回避」

ここまではよくある一般的な回避行動を取り上げてきましたが、普段何気なくとっている行動が実は回避行動の一種だったというケースもあります。

例えば、気をそらす行為もその一つ。

不安感が高まってきた時に、何か別の事をやって気を紛らわせようとした経験はないでしょうか。

  • 本を読む
  • スマホでゲームをする
  • 音楽を聴く
  • 一緒にいる人ととにかく会話する
  • 何か別の事を必死で空想する

他にも十人十色の気のそらし方があると思います。

気をそらすのもテクニックの一つではありますが、気をそらす事に頼りきってしまうと、逆にこれが予期不安の原因になるので注意しなくてはいけません。

例えば、いつも本を読む事で不安感から気をそらしていた人が、本を忘れて来た事に気づいたら…。

音楽を聴く事で不安感から気をそらしていたのに、ふいに音楽プレーヤーの充電が切れてしまったら…。

出かける時いつもついて来てくれる人が、急に都合がつかなくなってしまったら…。

気をそらす手段が不意に絶たれた時、おそらく不安感は一気に高まり、最悪の場合はパニック発作に至ってしまうかもしれません。

何かあるたびに気をそらす事に集中しなくてはいけないっていうのも、なんだか窮屈ですよね。

 

大切なのは、不安から気をそらす事ではありません。不安と直面して、自分の力で対処する事です。気をそらすテクニックだけに頼らず、呼吸法を使って不安を乗り切る訓練をコツコツ続けていきましょう。

そんなの無理だよ、なんて思わなくて大丈夫。既に対処方法は学んだはずです。自分の対処能力、そして人間の身体の仕組みを信じてください。

でも無理しすぎは禁物ですよ。「気をそらしているな」と気づいたら、少しずつ呼吸法に切り替えていく感じで。少しずつ少しずついきましょーう

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ここに記載の治療法や対処法は、あくまで個人的見解に基づいています。 効果の有無や程度は保証できませんので、ふーん、そういう事もあるんだねー、ぐらいの感じでご理解いただけると幸いです。
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