村田沙耶香著「コンビニ人間」に見る「普通」の不確かさ

こんにちは、あろはー。管理人まー、です。

「コンビニ人間」、読みまして。

終始、心のどの辺りだかをキュッとつねられている感じでした。なんかソワソワしたなあ。ゾッとしたし、チクチクしたし。

「コンビニ人間」村田沙耶香(文春文庫)- Amazonより

「コンビニ人間」(コンビニにんげん)は村田沙耶香による日本の小説作品。『文學界』2016年6月号に掲載され、文藝春秋より2016年7月27日に単行本が発売された。2016年、第155回芥川龍之介賞を受賞した。

Wikipedia より

「いらっしゃいませー!」お客様がたてる音に負けじと、私は叫ぶ。古倉恵子、コンビニバイト歴18年。彼氏なしの36歳。日々コンビニ食を食べ、夢の中でもレジを打ち、「店員」でいるときのみ世界の歯車になれる。ある日婚活目的の新入り男性・白羽がやってきて……。現代の実存を軽やかに問う第155回芥川賞受賞作。解説・中村文則

背表紙の内容紹介より

文庫150ページそこそこのかなり短い作品です。読み終えるのに2時間はかからなかったと思います。

それにしても、読んでいる間中ずっとキュッとしていたのは我ながら何故なんだろうなあ。

以下、ネタバレにならない程度に物語をおさえつつ感想を綴ってみます。

「普通」が分からない主人公に突きつけられる歪な「普通」

主人公の古倉さんは共感性が欠落していて、人間の行動規範というものが一切理解できないのですよ。作中ではっきり特定はしておらず、私の浅識でこれがASDか何かだとは断言できないのだけど、そういう発達障害のようなものとして語られています。

そんな彼女だから、コミュニケーションのルールが分からない。幼い頃から思った通りに行動するたび、周囲に気味悪がられて矯正されてきた経緯があって、自身は何が正解かまるで分かっていないのですね。だけど、社会は「強制的に異物を排除する」ようにできているという事だけは体感として知っている。

でもコンビニでバイトを始めてから、彼女はやっと「異物」でなくなって、それどころかちゃんと社会の「歯車」として機能するようになるんです。マニュアルに忠実な「店員」であり続ける限り異物にはなり得ない世界を見つけたわけです。

古倉さんはそれ以上の事は求めていなかった。それでよかった。だがしかし。36歳恋愛経験なし、もちろん子なし、職歴はコンビニバイトのみという彼女を、周囲は「同じ世界の住人」とは認めてくれない。やっぱり異物めいた扱いを受けていくのですよ。

で、あの結末。

清々しいやら、苦々しいやら。気になる方はぜひ読んでみてほしいなあと。

「普通」フィルターを通した善意は、布教めいている

なんか、共感のような同情のような、モヤモヤした切なさがあったのだよなあ。古倉さんに対して。

私自身、アラフォー独身、子なし、非正規社員という社会的には似たような立場だからかもしれない。

私の場合、幸い類友が何人かいるので、日頃は呑気に過ごせているのだけど、あえて「普通」のコミュニティに突っ込んだら速やかに異物扱いされるのだろうと思います。実際、職場なんかではよく経験しますもん。異物扱いというか、おせっかいというか。「だめだよ結婚しなきゃ、誰か紹介してあげる」とナチュラルに言ってくるような人、少なくない。「ちゃんと正社員になった方がいいよ」っていう人とか。「え、日傘ささないの?だめだよ!さしなよ!」って人までいる。

ちなみに、結婚とか就職については「あはー、ですよねー。私の周りに同じような友達が多くて、みんな楽しくやってるから、なかなか焦りが出てこないんですよねー」って返してます、いつも。

なんか、あれですよね。風の谷にいきなり攻め込んできて世界秩序に取り込もうとするトルメキア軍みたいですよね。(伝わる?)

風の谷は風の谷で、つつましく幸せにやってるのにさー。これ以上の領土とか富とか求めてないのにさー。大きなお世話なのよトルメキア。(伝わる?)

相手が善意で言ってくれている事はよく分かっているつもり。だから、あははーって流しているのだけど、「コンビニ人間」では「普通」フィルターを通したそれらの善意を、一周回ってもはや悪意じゃない?てか布教みたいじゃない?という見地でさらりと描いています。

その「さらり」っぷりに書き手のやるせなさみたいなものが滲み出ている気がして、著者の村田さんに興味がグッとわきまして。ググってみたのですよ。

そしたら、なかなかトリッキーな人物でした。作家仲間からはクレイジーと呼ばれているのだとか。笑。

村田さん自身が今でも週3日コンビニでバイトをされているんですって。自由。

インタビュー記事等を読み漁りました。面白い人ですね。しかも同世代。しかも可愛らしい。

とあるインタビュー記事の中で、こんな事を言っておられました。

ある飲み会で、「村田さんってサラダ取り分けたこと一切ないよね、そういうことできないと嫁に行けないよ」って言われてシーザーサラダを取り分けさせられたことがあるんです。

私たちの世代がこれまで、古い価値観を人に押しつけられたときに笑ってごまかして逃げてきたせいで、いまも若い女の子が同じ目に遭ってるかもしれない……。それこそ、どこかでシーザーサラダを頑張って取り分けさせられてるかもしれないって思うと、本当に辛いんですよね。私もそういうとき、笑ってごまかしてしまうことがいまだにあるので、よくないなと思っています。

分かるー。そういうのあるー。

わたしも面倒臭くてつい笑ってやり過ごしちゃう。でも本当は良くないのかもしれませんね。

かと言って「それハラスメントですよ!」って怒るのも違う気がするし、とうとうと愉し始めるのも違う気がする。

なにしろ相手には悪意がない場合が多い。まあ、悪意ある場合もあるけどね。

だからもう、なんというか、こちらはこちらで案外幸せなんですよって事を地道に伝えていくしかないのかなあと思ったりしています。

「独身を謳歌」なんて言うと、少子高齢化やら移民問題やらを盾に攻撃してくる人もなくはなさそうだけど。政治家にも多いしね。それはね、もう、せちがらいとしか。うん。

ともあれ「コンビニ人間」面白かった。

「普通にならなきゃ」っていう強迫観念を大なり小なり経験した事がある人は、心のどこかしらをキュッと握られる感じを覚えるのじゃないかと。

村田さんの他の著作もぜひ読みたい。(おわり)

ここに記載の治療法や対処法は、あくまで個人的見解に基づいています。
効果の有無や程度は保証できませんので、ふーん、そういう事もあるんだねー、ぐらいの感じでご理解いただけると幸いです。

ブログ管理人の自己紹介とパニック障害の経緯などは、コチラより。
→「ごあいさつ


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管理人まー

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↑Twitterやってます(@ok_daijobu) パニック障害がすっかり治ったアラフォー女です。 35歳の時、通勤電車内でパニック発作を発症。以来、不安、恐怖、息切れ、めまいなどの症状が日常的に現れるように。電車やバスに乗れない、スーパーのレジに並べないなどの『広場恐怖症』や、「またあの症状が出たらどうしよう」という『予期不安』に苛まれ、一時は仕事はおろか外出さえもままならない状態でした。その後少しずつ症状が改善していき、2年後にほぼ寛解。さらに1年後にはすっかり完治。 克服するためにいろいろ試した事や感じた事などを、このブログに綴っていこうと思います。 元商業ライター。現地方OL。

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